
「106万円の壁」撤廃へ:パートタイム労働者の社会保険適用拡大
パートタイムやアルバイトで働く方々にとって大きな転換点となる「106万円の壁」問題。
政府はこの壁を撤廃し、より多くの短時間労働者に社会保険への加入を促す制度改正を段階的に進めています。
本記事では、制度の概要と拡大スケジュール、企業や労働者への影響、そして対応のポイントをわかりやすく解説します。
1. 「106万円の壁」とは?
「106万円の壁」とは、パートタイマーなどの短時間労働者が厚生年金・健康保険などの社会保険に加入するかどうかの目安となる年収ラインです。
現行制度では以下の条件をすべて満たすと、社会保険の加入対象になります
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上(年収約106万円)
- 2カ月を超える雇用の見込み
- 学生でない
- 従業員101人以上の企業(2024年10月以降は51人以上)
これにより、年収が106万円を超えると社会保険料の負担が発生し、手取りが減ってしまうため、あえて労働時間を抑える「働き控え」が生じていました。
2. 撤廃の背景と目的
政府がこの壁の撤廃に踏み切る背景には、以下の社会的課題があります。
- 少子高齢化による労働力不足
- 女性の就業促進・キャリア形成支援
- 非正規雇用者の老後保障の充実
厚生労働省は、「働き方に中立な制度設計」を掲げ、年収での区切りによって就労調整が起こらない仕組みを目指しています。
3. 今後の制度拡大スケジュール
政府はすでに段階的に適用対象を拡大しており、今後さらに企業規模の要件が緩和されます
施行時期 | 適用対象企業 |
---|---|
2022年10月 | 従業員101人以上の企業 |
2024年10月 | 従業員51人以上の企業 |
今後の見通し | 企業規模によらず、すべての事業所への拡大が検討中 |
4. 企業が取るべき対応とは?
社会保険適用拡大は、企業にとっても人事・労務面で大きな影響を及ぼします。以下の準備が求められます
- 対象従業員の洗い出しと通知
- 就業規則・雇用契約書の整備
- 保険加入手続きの体制整備
- 社会保険料負担分の人件費試算と予算反映
- 従業員への周知と相談対応(制度理解・手取り減少対策)
一方で、長期的には人材定着や採用力強化につながるチャンスでもあります。
5. まとめ
「106万円の壁」撤廃は、パート・アルバイトを含めた労働者の生活と老後の安心を支える大きな制度転換です。
制度の趣旨を正しく理解し、企業と働き手双方にとって前向きな運用ができるよう、今からの準備が重要です。
最新情報や法改正への対応について不明な点がある場合は、社労士や専門家に早めに相談しましょう。
※本記事は2025年6月時点の情報に基づいています。最新の制度詳細は厚生労働省の公式発表をご確認ください。