熱中症対策の義務化:労働安全衛生法改正への対応

熱中症対策の義務化:労働安全衛生法改正への対応

2025年6月1日より、改正労働安全衛生法が施行され、職場における熱中症対策が義務化されます。
 
これまで努力義務とされていた対策が「義務」へと格上げされ、違反時には是正指導や場合によっては罰則の対象となる可能性もあります。
 
本記事では、改正の背景と内容、企業が準備すべきポイントについてわかりやすく解説します。


1. 背景:なぜ熱中症対策が義務化されるのか?

日本では近年、夏季の猛暑が常態化しており、屋外・屋内を問わず熱中症による労災が増加傾向にあります。
 
厚生労働省の統計によれば、2023年の職場での熱中症による死傷者数は1,000人超を記録。建設業、運送業、製造業、警備業など幅広い業種で発生しています。
 
これを受けて、労働者の健康を守るために事業者による具体的かつ実効性のある対策を法的に求める方針が打ち出されました。

2. 改正労働安全衛生法のポイント

2025年6月から、以下の点が法的義務となります

  • 作業環境のWBGT値(暑さ指数)によるリスク評価
  • リスクに応じた対策の計画・実施(例:冷房機器の導入、休憩の確保など)
  • 労働者への熱中症予防教育の実施
  • 体調不良者への対応体制の整備

これらはすべて文書化・記録管理が求められる見込みです。

3. 対象となる職場・業種

以下のような環境で働く全ての労働者が対象となります

  • 屋外作業(建設、警備、農業など)
  • 空調が不十分な屋内(工場、倉庫、厨房など)
  • 高温機器を使用する作業場

事務所でもエアコン未設置や在庫作業などの実態があれば、対象となる可能性があります。

4. 企業が取るべき対応ステップ

今のうちから以下の対応を段階的に進めておきましょう。

  1. 作業場ごとのリスクアセスメント(WBGT計測など)
  2. 熱中症対策マニュアルの策定(作業手順・休憩指針)
  3. 対策機器の導入(スポットクーラー、日除け、ミストなど)
  4. 従業員への研修・教育(eラーニング、朝礼など)
  5. 体調不良時の対応フロー整備(責任者の明確化、救急対応)

5. 対応が遅れるとどうなる?

義務化後に対策を講じていない場合、労働基準監督署による是正勧告・指導の対象となります。
 
万一、熱中症による労災事故が発生した場合、安全配慮義務違反として企業責任が問われる可能性もあるため、十分な注意が必要です。

6. まとめ

改正労働安全衛生法により、熱中症対策は「努力義務」から「法的義務」へと大きく変化します。
 
安全は全ての企業活動の土台です。特に暑さの厳しくなる季節に向けて、早めの準備と従業員との情報共有を行いましょう。


※本記事は2025年6月時点の情報に基づいています。最新情報は厚生労働省の通知をご確認ください。