【2026年10月改正】同一労働同一賃金ガイドライン改正|賞与・手当・労働条件通知書はどう変わる?

2026/10/08 全記事, 法改正
【2026年10月改正】同一労働同一賃金ガイドライン改正|賞与・手当・労働条件通知書はどう変わる?
中小企業経営者・人事労務担当者の皆さまへ
2026年10月、
同一労働同一賃金の
ルールが変わりました

正社員だけに支給している住宅手当や家族手当、賞与・退職手当。その違いを、待遇の目的や働き方に照らして説明できるでしょうか。

2026年10月1日施行・適用の改正内容と、労働条件通知書・賃金規程等の見直しポイントを、具体例を交えて解説します。

2026年10月8日公開 | 代官山社会保険労務士法人

雇用契約書・賃金規程の見直しを相談する
まず結論:通知書の改訂と「説明できる待遇差」の確認が重要です

2026年(令和8年)10月1日から、パートタイム・有期雇用労働法施行規則と、同一労働同一賃金ガイドライン・雇用管理指針の改正が施行・適用されています。

「非正規社員にも賞与や退職金を必ず同額支給しなければならない」という改正ではありません。一方、従来からの「雇用形態だけを理由とする不合理な待遇差は禁止」という原則を踏まえ、各手当の取扱いや待遇差の説明方法について、これまで以上に具体的な点検が求められます。

POINT 01|新たな明示事項雇入れ時の労働条件通知書に「待遇差の説明を求められる旨」を追加
POINT 02|判断基準の明確化賞与・退職手当・家族手当・住宅手当などの待遇差を点検
POINT 03|説明体制の整備賃金規程だけでなく、待遇差を説明する資料と担当窓口を整える
Overview

2026年10月改正で、何が変わったのか

今回の改正は、同一労働同一賃金に関する制度の施行後約5年の検証と、最高裁判決等の蓄積を踏まえたものです。2026年4月28日に省令・告示が公布され、10月1日から施行・適用されています。法律そのものが今回新たに改正されたわけではありません。

区分今回変わったこと企業の主な対応
省令の改正
パートタイム・有期雇用労働法施行規則
雇入れ時の明示事項に「待遇差等の説明を求めることができる旨」を追加労働条件通知書等の様式を改訂する
告示の改正
同一労働同一賃金ガイドライン
賞与、退職手当、家族手当、住宅手当、休暇などの判断の考え方を追加・充実手当の支給要件、運用実態、待遇差の根拠を点検する
告示の改正
雇用管理指針
待遇差の説明方法、福利厚生施設、正社員転換措置、公正な賃金評価等の取扱いを見直し説明資料、相談窓口、転換措置等を確認する
重要:以前からある義務と、今回の追加事項は別です

正社員とパート・有期雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けない義務や、労働者の求めに応じて待遇差の内容・理由等を説明する義務は、今回初めて生まれたものではありません。今回、雇入れ時に「説明を求めることができる旨」を明示する義務が追加され、ガイドラインと雇用管理指針の内容が拡充されました。

Basic Rule

同一労働同一賃金は「全員同額」の制度ではありません

同一労働同一賃金は、同じ企業で働く正社員とパート・有期雇用労働者の間で、基本給・賞与・各種手当・福利厚生など、個々の待遇について不合理な差を設けないためのルールです。

比較するときは、①仕事内容と責任の程度、②配置転換・転勤・職務変更の範囲、③経験・能力・成果・勤続年数などの事情を、各待遇の性質や支給目的に照らして確認します。

均等待遇(法第9条)

職務内容と人材活用の仕組み・運用などが正社員と同一である短時間・有期雇用労働者について、差別的取扱いを禁止する考え方です。

均衡待遇(法第8条)

仕事や責任に違いがある場合でも、その違いだけであらゆる待遇差を正当化することはできません。手当等の目的に照らし、違いに見合う内容かを判断します。

例えば「正社員は月給制、契約社員は時給制だから家族手当はゼロ」という説明だけでは十分とは限りません。家族手当が何のための手当なのかを確認し、それに照らして支給対象を検討する必要があります。

「正社員の定着を図るため」だけでは結論は出ません

今回のガイドラインは、正社員人材の確保・定着という目的があっても、それだけで待遇差が当然に合理的になるわけではないことを明確にしました。「正社員だから」「契約社員だから」という区分名だけでなく、待遇の目的と実際の働き方を確認します。

Allowances & Bonus

賞与・退職手当・家族手当・住宅手当をどう判断する?

今回のガイドライン改正で、中小企業が特に点検したいのは雇用区分ごとに支給・不支給を分けている待遇です。以下は理解のための例であり、実際の適法性は就業規則、支給目的、個々の勤務実態等によって判断されます。

① 家族手当|契約更新を重ねる従業員にも注意

2026年:ガイドラインに新規追加着眼点:継続勤務の見込み

改正ガイドラインは、契約更新を繰り返すなど、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、正社員と同一の家族手当を支給するとの考え方を示しました。

比較的説明しやすい例正社員には扶養家族に係る手当がある一方、短期間の雇用で継続勤務が見込まれない契約社員には支給していない。
問題となり得る例契約を何度も更新し、長期勤務が見込まれる契約社員に、雇用区分だけを理由として家族手当を一切支給していない。

「何年以上なら必ず対象」という一律の年数基準が示されているわけではありません。契約期間、更新回数、更新見込みなどを踏まえて判断します。配偶者の収入要件を設ける手当は、就業調整を招かない制度への見直しが望まれています。

② 住宅手当|「転勤の有無」という建前だけでは不十分

2026年:ガイドラインに新規追加着眼点:転居を伴う配置変更の実態

転居を伴う配置変更の有無に応じて支給する住宅手当について、正社員と同じく転居を伴う配置変更がある短時間・有期雇用労働者には、同一の住宅手当を支給するとの考え方が新たに示されました。

比較的説明しやすい例全国転勤が見込まれる正社員に住宅手当を支給し、勤務地限定で転居を伴う異動が見込まれない契約社員には支給しない。
問題となり得る例規程上は「転勤者向けの手当」としながら、実際には正社員に転居を伴う異動を命じておらず、契約社員だけを対象外としている。

転勤の有無とは無関係に住居費補助として支給する住宅手当も、対象外になるわけではありません。手当の実際の目的に照らして不合理な相違がないか確認します。

③ 賞与|一律不支給ではなく、支給目的と貢献を確認

従来の記載を充実着眼点:評価・功労・勤務実績

賞与には、業績への貢献に対する報奨、労務の対価の後払い、生活費補助、就労意欲の向上など、複数の目的があり得ます。その目的がパート・有期雇用労働者にも当てはまるのに、仕事内容等の違いに応じた均衡のとれた支給をしていない場合、待遇差が不合理と判断される可能性があります。

検討の余地がある例賞与の算定要素が業績・評価・勤務期間で、雇用区分にかかわらず同じ貢献を適切に評価し、差があれば根拠を説明できる。
問題となり得る例正社員と同様に営業成績へ貢献している契約社員について、貢献に対する賞与の趣旨が当てはまるのに、合理的な検討なく一律不支給としている。

「必ず正社員と同じ金額」という意味ではありません。支給目的、仕事内容、配置変更の範囲、労使交渉を経た賃金設計等を総合して判断します。

④ 退職手当|長期雇用の契約社員を一律除外していないか

2026年:ガイドラインに新規追加着眼点:後払い・功労報償などの目的

退職手当にも、労務の対価の後払い、長期勤続への功労報償などの性質・目的があります。その目的がパート・有期雇用労働者にも当てはまるのに、職務内容や配置変更の範囲等の違いに見合う支給がなく、他の待遇で適切に考慮した事情もない場合には、不合理と判断される可能性があります。

確認したい実務退職手当の目的・算定要素が規程で整理され、継続勤務の実態や職務の違い、他の待遇との関係を説明できる。
問題となり得る例何年も契約更新して正社員に近い業務を担う従業員を、支給目的に照らした検討なく「有期雇用」のみを理由に全面除外する。

ガイドラインに退職手当の記載が加わったことは、企業に退職金制度の一律新設や、全従業員への同額支給を求めるものではありません。

そのほか、今回追加・充実された待遇

待遇確認したいポイント
無事故手当業務内容が同じ労働者に、雇用区分によって不合理な支給差がないか。
病気休職・病気休暇療養に専念するための休職・休暇とその期間の給与保障について、相応に継続勤務が見込まれる労働者を適切に扱っているか。
夏季・冬季休暇正社員だけに休暇を設けていないか。付与条件・日数等について休暇の趣旨と勤務実態を点検する。
勤続に対する褒賞同じ勤続期間に達した労働者に、勤続に対する褒賞を雇用区分だけで排除していないか。
福利厚生施設施設の利用料金・割引率等の条件に、不合理な相違がないか。

※各待遇の具体的な判断は、ガイドラインの趣旨および待遇の目的・勤務実態によります。

Written Notice

労働条件通知書に追加する項目と記載例

今回の改正のうち、書式変更という形で直接対応が必要なのがここです。2026年10月1日以降、パートタイム・有期雇用労働者を新たに雇い入れる際、従来の明示事項に加え、「通常の労働者との待遇差の内容・理由等について、説明を求めることができる旨」を書面の交付等により明示する義務があります(法第6条第1項、施行規則第2条第1項第4号)。

労働条件通知書への記載例(厚生労働省モデルに基づく)
次の窓口に対して、通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。

部署名:人事総務部
担当者:労務担当者
連絡先:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

※窓口の部署・担当者・連絡先は実際の社内体制に合わせて記入してください。上記は記載例であり、定型文をそのまま使用する義務があるわけではありません。

以前から必要な記載も、あわせて点検

パート・有期雇用労働者については、従来から「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「雇用管理の改善等に関する相談窓口」について書面等での明示が必要です。今回の追加事項を記載するとともに、これらの漏れも確認しましょう。

契約更新時や、既に雇っている従業員は?

今回新たに追加された明示義務は雇入れ時のものです。2026年10月1日に在籍者全員の通知書を一斉に再交付することまで求める改正ではありません。ただし、既存の書式は速やかに改訂し、更新時の案内などでも説明を求めることができる旨を周知する運用が適切です。なお、有期労働契約の更新時には、労働基準法に基づく別途の明示事項にも注意が必要です。

厚生労働省は今回の改正を反映したモデル労働条件通知書(PDF)を公開しています。現在の雇用契約書と兼用する様式でも、追加項目が抜けていないか確認してください。

Explanation

従業員から待遇差を尋ねられたら、どう説明する?

パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項に基づき、従業員から求めがあれば、会社は正社員との待遇差の内容・理由等を説明する義務があります。この義務自体は従来から存在します。

2026年10月改正では、雇用管理指針で、その説明方法がより具体的に示されました。原則として次のいずれかによって説明します。

方法A:資料を使って口頭説明

賃金表や手当の支給基準等の資料を用いて、担当者が分かりやすく説明する。

方法B:分かりやすい資料を交付

説明すべき事項を全て記載した資料を渡す等の方法で説明する。

方法Aの場合も、説明に使用した資料を交付することが望ましい取扱いです。個人情報等の観点から交付が難しい場合でも、後から閲覧できるようにする工夫が求められます。

説明の「中身」は具体的であることが重要

避けたい説明「契約社員には住宅手当はありません。社内規程でそう決まっています。」
説明の組み立て例「この住宅手当は転居を伴う異動に係る負担への補助として設けています。対象者の異動範囲と実際の運用を確認した上で、適用の有無を判断しています。」

重要なのは、規程に書いてあるからという説明にとどめず、制度の目的と実態が合致しているかを示せることです。待遇差について十分な説明がなされなかった事情や、労働者の意向を踏まえず一方的に決めた事情は、不合理性の判断で考慮され得ます。

Management

雇用管理指針の見直し:評価・正社員転換・福利厚生

今回改正されたのは賃金や通知書だけではありません。雇用管理指針には、職場での運用に関わる変更も盛り込まれています。

項目改正後に確認したいこと
公正な評価と賃金決定職務内容や成果等を公正に評価し、昇給に反映するなど、客観的な評価に基づき賃金を決めることが望ましいと明記。
正社員転換措置正社員転換のための制度を設け、複数の措置を講じることが望ましい。既存の転換推進措置を講ずる際は、本人の意向確認・配慮にも留意。
福利厚生施設法第12条に基づく給食施設・休憩室・更衣室の利用機会の付与義務とは別に、保育所・駐車場等についても利用上の便宜を供与する措置への配慮が求められる。
労働者の意見の把握話合い・アンケート等で意見を聴く機会を設け、反映方法を工夫するよう努める。
パート・有期過半数代表者代表者の選出手続・資格を明確化。正当な代表活動を理由とする不利益取扱いをしないことや、必要な事務上の配慮を行うこと等も規定。

※「義務」「配慮」「努力義務」「望ましい取組」は同じ意味ではありません。自社で実施すべき対応を区別して検討しましょう。

正社員転換制度の新設が一律に必須になったわけではありません

正社員への転換を推進する措置を講じる義務は従来から存在します。一方、今回示された「転換制度を設け、複数の措置を講じること」自体は望ましい取組という位置付けです。「今回の改正で全社に正社員転換試験の新設が義務化された」と理解しないよう注意してください。

※派遣労働者にも同一労働同一賃金ガイドラインの改正が及び、派遣元事業主の雇入れ時・派遣時の明示事項も改正されています。本記事では主に自社で直接雇用するパート・有期雇用労働者の対応を扱います。

Practical Points

中小企業が今すぐ確認したい実務チェックリスト

重要なのは、単に労働条件通知書へ文言を一行追加して終わりにしないことです。支給の実態と規程が一致しているか、説明できる状態になっているかを、次の順番で確認します。

STEP 01

書式の修正

通知書・雇用契約書に説明請求に関する明示事項を追加する。

STEP 02

待遇の棚卸し

正社員とパート・有期社員を待遇ごとに比較し、支給目的と実態を整理する。

STEP 03

規程・運用の整備

不合理な差を見直し、担当窓口と説明資料を整える。

  • 通知書:説明を求められる旨、窓口・連絡先を記載しているか。
  • 雇用区分:正社員、パート、契約社員等の職務・責任・異動範囲を整理しているか。
  • 賞与・退職手当:支給目的、算定基準、適用対象を説明できるか。
  • 家族手当:更新を重ねる従業員の継続勤務見込みを考慮しているか。
  • 住宅手当:支給要件と実際の転勤・配置転換の運用が一致しているか。
  • 休暇・福利厚生:雇用区分だけを理由とする取扱いの差がないか。
  • 賃金・就業規則:実際の支給方法と規程、労働条件通知書が一致しているか。
  • 説明体制:従業員から質問を受けたとき、資料を用いて説明できるか。
  • 従業員との協議:見直し時に当事者の意向や不利益変更の問題を確認しているか。

「手当の廃止」で差をなくす前に確認を

待遇差の解消は、原則としてパート・有期雇用労働者の待遇改善を図る方向で進めることが求められます。例えば、家族手当を全員から削って差をなくす方法は、既存社員の労働条件の不利益変更に当たり得ます。会社が一方的に賃金規程を変更すれば自由に実施できるわけではありません。労働契約法第9条・第10条などを踏まえ、変更方法と労使協議を慎重に検討しましょう。

FAQ

よくある質問と、対応しなかった場合のリスク

パート・契約社員にも、正社員と同じ賞与や退職金を出す必要がありますか?

一律に同額・同条件を求める制度ではありません。待遇の目的がどこまで共通するか、職務・責任・異動範囲・評価等の違いに照らして、合理的な説明ができるかが判断の中心です。

家族手当は何年間働いたら支給対象になりますか?

改正ガイドラインや厚生労働省Q&Aは、全国一律の年数基準を設定していません。契約期間、更新回数、継続勤務の見込みなど、個別の事情を確認します。

今回の改正に対応しないと、すぐ罰則が科されますか?

パート・有期雇用労働者の雇入れ時に法定の明示事項を記載しない場合、10万円以下の過料の対象となり得ます。一方、ガイドラインに記載された全ての推奨措置について、新たに同じ過料が課されたわけではありません。

待遇差をそのまま放置した場合のリスクは?

待遇差が不合理と判断されれば、差額に相当する損害賠償請求等の労使紛争につながる可能性があります。説明義務への不対応や社内の不信感、行政への相談・紛争解決援助にも注意が必要です。待遇差があることだけで直ちに違法になるわけではありませんが、その理由を検証・記録しておくことが重要です。

Support

当法人がサポートできること

代官山社会保険労務士法人では、労働条件通知書の修正から賃金・手当制度の点検、就業規則等の整備まで、各社の実情に応じた労務管理を支援します。

SUPPORT 01

労働条件通知書の整備

2026年10月改正の追加明示事項や、既存書式の記載漏れを確認します。

SUPPORT 02

手当・賞与制度の点検

家族手当・住宅手当・賞与・退職手当等の支給目的と運用を整理します。

SUPPORT 03

就業規則・賃金規程

雇用区分ごとの取扱いを確認し、実態に合った規程整備を支援します。

SUPPORT 04

待遇差の説明体制

比較資料や説明の進め方、相談窓口の運用について検討します。

Summary

「説明できる賃金・手当制度」へ。
優先順位を付けて、着実に見直しを

2026年10月改正への対応は、①労働条件通知書の改訂、②待遇差の点検、③説明資料と運用体制の整備の3点が基本です。

特に家族手当・住宅手当・賞与・退職手当は、規程の文言だけでなく「何を目的に支給しているか」「誰が実際に同じ条件を満たしているか」に目を向ける必要があります。既存の制度を全て作り直すのではなく、優先順位を付けて着実に見直すことが現実的です。